1/2ページ目 ここ数日で大分暖かくなったけど、風は結構冷たい。 それならそれで、いいことがありそうな予感もする。 「あっ、輝ニ〜」 走って駆け寄ると、既に待っていた輝ニは不機嫌そうに顔をしかめた。 「泉……」 お前な、と言いかけた輝ニに腕を絡めて黙殺。 デートでお説教されたくないもん。 そのまま無言で歩く。 歩く時は無言になることが多いけど、輝ニとの無言は何だか心地いい。 「輝一君は元気?」 「ああ」 試しに話題を振っても長続きしない。 それでも嬉しい。 最初は素っ気なくて差し出した手も振り払われたけど、今こうして腕を組んで歩いているから変わったんだって分かる。 「…嬉しそうだな……」 珍しく彼から話題が出た。 「嬉しいんだもん!」 大好きな輝ニと一緒に居られて、偶にはみんなで集まって。 「……寒っ!」 冷たい風が私を現実に引き戻した。 「そんな薄着で来るからだ」 嫌みに聞こえるけど、上着を貸してくれる輝ニはやっぱり優しい。 「人目惹くから、外でそんな格好するな……」 普段は何も言わないのに、今日は羽織らせて抱き締めてくれた。 「うん……」 でも時々薄着しちゃうのは、気にしてほしいから。 「輝ニって独占欲強いよね」 「人の事を言えるのか、確信犯」 「あっ、バレてた?」 「当たり前だ」 薄着をするのは、心配してくれると嬉しいから。 「輝ニって優しいよね」 私がこう言うと照れているのか、絶対に顔を見せてくれない。 でも言葉なしでも伝わるよ、輝ニのそっけないやさしさ。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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