1/3ページ目 「ヒカリ」 「はい」 いつもの和気藹々とした雰囲気じゃない。きっとすごく大切な話があるんだわ。 「結婚しなさい」 「………………はい?」 けっこん? けっこんって、あの結婚? 血痕? いや、それはおかしいか。てことは……って、待って待って! 私まだ大学生なのに? もう結婚? 「お父さん、本気で言ってるの……?」 「当たり前じゃないか」 うん、みんなでグルになって私をからかおうという魂胆じゃないのは分かった。 「ちなみに、誰と?」 「タケルに決まってんだろ」 何当たり前のこと聞いてんだ? と言わんばかりに答えたのはお兄ちゃん。いつもからかってくるのに、今日は大真面目だ。 「あなたたちならこれ以上待つ必要もないでしょ?」 昔からの仲だし、確かにそうなんだけど、普通嫁ぐ娘を見送る家族ってもうちょっと反対するんじゃないの? 私がタケル君を連れてきた時に試すような質問したりして。 「でも私たち、まだ結婚の話なんてしてないわ」 たまたまデート中に見かけた結婚式の様子やエンゲージリングに憧れて私たちもいつか……なんて見つめ合ったことはあるけど、ちゃんと話し合ったことなんてない。ただの1回もない。成人したとはいえ、社会的にはまだ子どもだもの。 「心配ない。タケル君もご家族も了承済みだ」 「え」 玄関のチャイムが鳴ったと思ったら、引っ越し屋さんみたいな格好の人がふたり入ってきた。 「わざわざ悪いな」 「タケルとヒカリちゃんのためだ。これくらいどうってことないさ」 よく見ればひとりはヤマトさんだった。そしてもうひとりはヤマトさんのお父さん。 「荷物はまとまってるかい?」 今結婚しろって言われて、もう新居に引っ越し? いやいやいや、ない! 絶対にないわ! 「ヒカリちゃん?」 それなのに、みんな心配そうに私を見てる。え、おかしいのは私の方なの? <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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