1/2ページ目 「タケル君……ごめんね」 「気にしなくていいよ。それより、足痛くない?」 「……少しましになったかな」 せっかくの夏祭りだからと着た浴衣に合わせて、サンダルではなく下駄を履いた。彼は可愛い、似合ってるよと褒めてくれて、歩きにくくないようにといつも以上にゆっくり歩いてくれた。はぐれないように、手を繋いで。 ふたりで夏祭りに行く回数はそろそろ片手の指を越えるが、屋台や景品は毎年違う顔ぶれであまり飽きない。 りんご飴を食べて、輪投げや射的に挑んで、お祭りの雰囲気を楽しんで。さて帰ろうかという時にそれは起こったのだった。 人混みから抜け出そうとした際に人とぶつかり、つまづいた拍子に下駄の鼻緒が折れた。タケルが受け止めてくれたおかげで転倒は免れたものの、足の指の間が切れたらしく痛みが走った。捻ってはいないのが不幸中の幸いか。 喧騒から外れた場所で確認すると軽く出血しており、絆創膏で応急処置をする。傷口が開かないようにと、帰りは彼がおぶってくれることになった。 「あの、重くない?」 「むしろヒカリちゃんはもう少しふっくらしてもいいくらい。健康診断の結果に痩せすぎって書かれない?」 「私これでも標準よ」 「それならいいけど」 話していると紛れるのは痛みだけではなかった。会話が途切れた途端に、彼の背中の広さや温かさに気付いて鼓動が高鳴る。背負われているのが嬉しいやら恥ずかしいやら、きっと今ヒカリの顔は夜目にも明らかなほど赤いのだろう。見えないとわかっていても、隠すように広い背中に額を付ける。 「タケル君」 「何?」 「来年も、お祭り行こうね」 「もちろん」 来年もまた浴衣を着よう。今日のことを忘れない為に。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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