1/4ページ目 「あ、うん。ちょっとね」 「どこ行くんだよ?」 「花屋だけど…せっかくだからお兄ちゃんも行かない?」 「? ああ」 Orange Day 「これ下さい」 「プレゼント用ですか?」 「はい」 ヒカリが選んだのは、オレンジ色のガーベラ。あげる相手は十中八九タケルだろう。でもそれだと疑問が浮かんだ。誕生日や付き合い始めた日でもないのになんで? 「お兄ちゃんも買ったら?」 「? なんでだ?」 「明日が何の日か知らない?」 「4年14日だろ? 何かあったっけ?」 ホワイトデーは一月前だし、バレンタインなんて二月も前だ。 「4月14日はオレンジデーよ」 「……はい?」 まったく分かっていない俺に、ヒカリは丁寧に説明し始めた。 「オレンジデーは、恋人同士の2人がその愛を確かめ合う為に、オレンジ色のものを贈る日なの」 「なるほど。それでガーベラにしたのか」 「うん。別に花じゃなくてもいいけど、他に思い付かなくて…この時期に咲いてる花でオレンジなのはガーベラぐらいだし」 「そういうことなら俺もこれにする。すいませーん」 空は、オレンジデーのことを知ってるだろうか? もし知らなくても、空の笑顔が見れるかもしれないと思うとわくわくする。綺麗に包まれたガーベラの花は、空の髪を連想させた。 「あ、もしもし?俺だけど」 『太一?どうしたの?』 「いや、その……急で何だけど明日暇か?」 『明日? そうね…暇だけど、どうかした?』 「せっかくだからさ、会わねえか?」 『………うん』 最近お互い忙しくて、あんまり会っていない。でも、明日会えると思うとドキドキして、明日が待ち遠しくなる。睡眠時間すらもどかしいくらいに。 翌日、部活はあったけど、早めに抜けて花束を取りに一度家に帰ってから、空と待ち合わせした公園に向かった。 「空」 ベンチに座って俺を待っていた空に声を掛ける。久しぶりに会った空は、クセのあるショートカットの髪を肩まで伸ばしていた。 「太一…それどうしたの?」 「あ、ああ…これか?」 「うん、綺麗ね」 俺が花束を持ってるのがよっぽど奇妙だったのか、空は少し怪訝そうな顔をしていた。 「あのさ、オレンジデーって知ってるか?」 「うん、話は聞いたことあるけど…って、オレンジデーって今日なの?」 「そうだけど、なんで聞いたことあるのに日付知らねえんだよ?」 「日付についてはみんな知っててどんなものプレゼントするかって話してたんだもん。どうりで下校デートするカップルが多いはずよね」 「そ、そうか?…まあ、とりあえずこれ受け取ってくれ」 そう言って俺は、ガーベラの花束を差し出した。 「これ…私に?」 「ああ」 「綺麗…ありがとう、太一」 良かった、空の笑顔が見れて。 「あ、太一…」 「どうしたんだ?」 「私、太一に何も用意してない…」 「あー……そうか」 「ねえ、何か欲しいものある?」 「そうだなぁ………」 春の夕陽に照らされて、少し伸びた空の髪に自然と目が行った。 その瞬間、あることを思い付いた。 「ちょっ、太一!?」 俺は隣に座る空を引き寄せて、そっと髪に触れた。 「俺は、空が欲しい」 「なっ……//」 「今日はもう少しだけ、一緒に居たいんだ」 忙しいから仕方ないと分かっていても、一緒に過ごす時間が欲しいから、もう少しだけと、甘えた考えが出てくる。 多分、次に会えるのはゴールデンウイーク辺りだって分かってるから。 「次は、遠出しない?」 「ああ」 少しずつ暗くなっている公園で、2人だけの約束を交わす。 何となく秘密めいていて、隠し事をした子供のような気持ちになった。 「どこへ行くか考えとくよ」 「うん」 帰り道、またしばらく会えなくなるけど、それでも心は暖かかった。会えない間は、約束が俺達を支えてくれるから。 〜end〜 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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