1/2ページ目 ヨーロッパなどの諸外国では、バレンタインに女性が男性にチョコレートを贈るという風習はなく、男女共に花やカードを贈り合う。 翌月にホワイトデーとしてお返しをするのは日本や韓国ぐらいである。 「田口、先月のお返しやるよ」 「えー、たったこれだけ?」 松山が渡したのは、チロルチョコ6つ。 もっと豪華なお返しを期待していただけに、仁沙は不満たらたらだ。 「ちゃんと3倍のお返しだぞ」 バレンタインに仁沙があげたのはチロルチョコ2つ。 小学生でもわかる、実に単純な3倍返しだ。 「まあいいや。ありがとう」 もらえるものは遠慮なくもらうため、不満を言いつつも素直に受け取っている。 放課後、八郎太はチロルチョコをおいしそうに頬張っている仁沙に近づいた。 「仁沙」 「なに?」 「……先月は、ありがとな」 何デートに誘う時みたいにドキドキしてるんだ、と内心ツッコミを入れながら、ハートの型抜きチョコレートを差し出す。 仁沙の顔がぱっと輝いた。 それはまるで、雲が晴れて太陽が顔を出すように。 「ありがとう。やっぱり八郎太のチョコが1番好き! あたしの好みに合ってるし」 「そうか……」 落ち着いているように見えて、八郎太は心臓のドキドキを必死に抑えている。 だが、気持ちとは抑圧されると反発してさらに強くなるものだ。 (今は、これだけでいいか) いつの日か、仁沙の笑顔以上のものを手に入れてやるという誓いとともに、八郎太の今年のホワイトデーは幕を閉じた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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