1/2ページ目 昔は、自分の気持ちを言葉にするのなんて難しくなかったのに。 素直になりたい 下校する生徒たちがそわそわしながら立っている私にちらりと視線を向けて通り過ぎて行く。 私は視線よりもあの人に会えるかどうかが気になって仕方ない。 まだ帰ってないよね。今日は欠席なんて事も、ないよね。 下校する生徒もまばらになってきて、もう少し厚着で来れば良かったなって後悔した。 今年は記録的な大雪が降っただけあって寒い。 オシャレに寒さの我慢は付き物だけど。 「ミミ君?」 「ふえっ?」 気が付くとすぐ傍には眼鏡をかけた真面目そうな人。 ずっと、ずーっと会いたかった人。 「…………丈先輩」 やっと会えた。 「どうしたんだい?」 「え、えっと……」 普段は考えなくても出るような言葉さえ出なくて、それがもどかしさに拍車をかける。 黙ってても通じないのに。 「わ、私の愛情あげよっか?」 「えっ?」 何言ってるのよ私! もっと素直な言い方ってものがあるでしょ!! 「…………期待しても、いいかな?」 「へっ?」 「本命チョコ、もらえるって……」 「………………うん」 もう答えは分かり切ってるのに、箱を差し出す手が震える。 それでも、ちゃんと渡せた。 「ありがとう」 「どう致しまして」 ちょっとは素直になれたかな? 「ミミ君……」 「なあに?」 あれ、丈先輩、顔がちょっと険しい。 「もしかして、ずっと待ってた?」 「う、うん」 「この寒いのに!!」 心配性で保護者っぽいところ、変わってないのね。 「急に来て驚かせたかったんだもん……」 「君って子は……」 呆れたようにしながら、しっかり私の手を握って歩き出す。 違う歩幅も合わせてくれる、そんなところが好き。 「丈先輩の手、あったかい」 「ミミ君の手が冷たいだけだよ」 いつもより寒いけど、伝わる手のぬくもりと近くなった距離から、すっごく幸せを感じられた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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