1/3ページ目 お菓子のレシピ本はともかく、表紙に書かれたホワイトデー特集につられて買った雑誌は無駄な買い物だったかもしれない。甘いものに目がないあの子なら何でも喜んでくれそうだけど、恋人として特別なものを贈りたい気持ちもある。バレンタインは頑張ってくれたことだしね。 パラパラとページをめくっていると、流行りの小物やアクセサリーが目に入る。美朱に似合いそうなのもいくつかあった。 「! これ、いいわねぇ」 お菓子も何か用意するとして、ホワイトデーのプレゼントは決まりね。 ホワイトデー当日、喜んでもらえる自信はあるけど少し緊張する。渡すだけでよかった。 「美朱、これ、バレンタインのお返し」 「ありがとう。開けてもいい?」 「もちろん」 包みを開くかさかさという音が聞こえる中、突如豪快に破れる音。申し訳なさそうにこちらを見つめる美朱と目が合う。 「ごめんなさい……」 「いいわよ、それくらい」 正直、あたしだけが緊張してたんじゃないって分かってちょっとほっとした。やっぱり実際に反応を見るまで当たりはずれは分からない。 「これ、財布?」 「ふふ、開けてみて?」 「うん……わあ、可愛い!」 赤いケースを開くにつれて白い花が開き、その中央には――。 「柳宿、ありがとう。すっごく嬉しい」 瞳をキラキラさせて何度も確かめるようにケースを開け閉めするところを見ると、これにしてよかったなと思う。やがて恭しく持ち上げたそれを手渡す。 「はめてくれる?」 「今は、右手にね」 すっと差し出された左手をやんわり下げて右手を取る。薬指にはめて、軽くキス。 「左手は本番まで取っておきたいの。ダメ?」 「……ダメ、じゃない」 真っ赤になって否定するところも可愛くて、頬に添えられた右手から少しだけ伝わる冷たさが思いの外心地よくて、自分の手を重ねて顔を近付けた。 願わくばこのまま、ずっと一緒にいたい。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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