1/3ページ目 「Treat!」 魔女の三角帽子を被った美朱がハロウィンの合言葉を言えば、柳宿は即座に「もてなし」と答えた。すっと差し出された両の手には、違う包みの飴がひとつずつ乗っている。片方は薄いピンクの地に赤いハートマークがいくつも描かれており、もう片方は無地の淡い紫の包み。 「好きな方を選んでいいわ。ただし、受け取ってからの交換はダメよ」 「えー……」 そう意味深なことを言われると、選ぶこちらも慎重になってしまうもので。 (これって、片方が当たりなんだよね。柳宿が選ばせたい方、柳宿が選ばせたい方……) おずおずと包みに手を近付けても彼は楽しそうな笑みを浮かべたまま、表情を変えてはくれない。こうなれば彼女に残された手段はひとつ。 「じゃあ、こっち!」 直感で選んだそれに触ってみて初めて気付いたが、彼女が手にした方――紫の包み――は少し形が違っていた。 「これ、飴じゃないの?」 ゆっくりと包みを開けば、「我愛你」の言葉と共に転がり出た指輪。同時にふわりと背中が包み込まれる。 「好きよ、美朱」 「柳宿……」 「試すようなことしてごめん。あんたがこっちを選んでくれたら今日言おうと思ってたの。あたしと、ずっと一緒にいてくれる?」 「っ……はい……」 左の薬指にリングが嵌められる。背中から彼の温もりが離れたかと思えば、今度は正面から抱きしめられる。 「美朱、ありがとう」 瞳を閉じる直前まで、彼女の視界には幸せそうな笑顔の柳宿が映っていた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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