1/3ページ目 朝の登校後、昼休みと探しても見つけられず、美朱は何度目かのため息をついた。せっかくのイベントなのだからやはり当日に渡したい。どれだけこちらが願っても逢えなければ意味がないというのに。 放課後になってから、かれこれ30分は歩き回っただろうか。気が付けば教室から随分離れた場所――音楽室の前にいた。ここで逢えなければもう諦めよう。そんな気さえする中、扉に手をかける。 「え……?」 「あら……美朱じゃない」 開けようと思ったその時、内側から扉が開かれ、探し回っていた人物が顔を出した。驚きと焦燥で頭が真っ白になる。早く渡さなければ、そんな考えとは裏腹に手も口も動かない。彼女の手元につと目を向けると、柳宿は「そういうこと」と意味深に呟いた。 「頑張りなさいよ」 ぽんと軽く頭を撫でて立ち去ろうとする彼の袖を、美朱は慌てて掴んだ。 「こ、これ……受け取ってください!」 上手く言葉にできたかもわからない。そっと紙袋に触れた手は、何かを確かめるようにぎこちない感じがした。 「これ…………本命、でいいのかしら?」 こちらを見つめる大きな双眸は期待と不安が混じった色合いで。小さく頷くだけで、精一杯だった。 「ありがとう。好きよ、美朱」 「あたしも、あたしも柳宿が好き」 漸く逢えたことと渡せたことへの安堵からか、力が抜けてもたれかかってしまう。離れようにも背中に回った手は思いの外力強く、美朱はそのまま身を預けた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
[編集] |