1/3ページ目 朝家を出ると、いつも目に入る陽のような淡い髪色。対照的な深い紫の瞳が梓を優しく映す。 「おはようございます、梓くん」 「お、おはようございます」 秋兵が迎えに来てくれるようになって暫く経つのに、梓はなかなかその光景に慣れなかった。朝から逢えるのも、一緒に登校できるのも勿論嬉しい。 彼は迎えに来てくれるようになって以来、梓を待たせたことがない。それが嬉しい反面、申し訳なさも感じていた。 「秋兵さん」 「はい」 「あの……いつもありがとうございます」 「いえ、僕が好きでしていることですから」 さらりとそんなことを言ってのけるのだからずるい。ますます好きになってしまう。 「秋兵さんは、ずるいです」 「え?」 「私ばかり嬉しいことしてもらって、私も何か返したいのに」 「梓くん……」 俯いた梓の頬に手を添え、目線を合わせるように秋兵が屈む。 「では、ひとつお願いを聞いていただけますか?」 「? はい」 不意に引き寄せられ、彼のぬくもりが伝わってくる。朝の静かな道に、自分の鼓動が大きく響いた気がした。 「好きですよ、梓」 「え……」 熱い眼差しに囚われて目を逸らせない。前髪が額をくすぐり、吐息が触れ合う。 早鐘を打ち始めた心臓を何とか宥めながら、おずおずと彼を抱き返す。瞼を閉じた次の瞬間、唇に柔らかなぬくもりが触れた。 唇が離れるとより強く抱きしめられる。 (秋兵さんも、どきどきしてる……?) 「ありがとうございます」 「い、いえ……」 名残惜しそうに離れた手が梓のそれを取り、歩き出す。繋いだ手から微かに伝わる鼓動にまたひとつ、胸が高鳴った。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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