1/2ページ目 寒空の下、ある者は足早に、またある者は友人たちと話に花を咲かせながら。三々五々帰路に着く。 「詩紋くーん!」 正門前に立つ少年に息を弾ませながら少女が駆け寄る。 「あかねちゃん」 「ごめんね、ホームルーム長引いちゃって……」 肩で息をする少女の乱れた髪をそっと直しながら、少年は微笑む。 「大丈夫だよ。ボクがあかねちゃんに早く逢いたかっただけだから」 甘い言葉に頬を染めつつ少女は反論する。 「寒かったでしょ?」 「少しね」 「やっぱり」 確かめるように少女の手が頬に触れ、ぬくもりを分けるように包み込んだ。 「寒いから、あかねちゃんを待たせたくなかったんだ」 ふわり。少年の頬を温めていた指先に、羽根のような口付けが落ちる。唇が触れた箇所からじんわりと熱が広がっていく。 「…………ありがとう」 ちらちら、ちらちら。灰色の空から白い花が舞い始めた。 ぬくもりを閉じ込めるように、少年は少女の手を包み込む。少女も握り返して応える。 「あかねちゃん」 「何?」 「ボク、志望校決めたよ。あかねちゃんと一緒にいられるように頑張るから」 ――待っててくれる? 少年の問いに少女が何と答えたか、降り積もる花とそれを舞わせる風だけが知っている。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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