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11周年お礼
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 バイクを走らせ向かった先には待ち人の姿。俺を見つけて安堵したように駆け寄る彼女。
「待たせたか?」
「時間通りよ。私が月麿さんを待たせたくなかっただけ」
 早く俺に会いたかった、とは言ってくれない。俺も会いたかったとは言わない。言えない。

 銀色のヘルメットを被った彼女が俺の後ろに跨り、腰にしっかりとしがみつく。
 今だけだ。こんな風に触れ合うのは、バイクに乗る時だけだ。
 心地よい温もりを俺のものに出来ればどんなにいいだろう。詮ないことを何度も考えては己に言い聞かせる。手放したのは、俺だと。
 今彼女が俺の傍にいるのは自衛の為で、俺を好きだからではない。彼女を守る立場にある俺が手を出すなど、許されるはずもない。

 駐輪場にバイクを停め、ふたりで俺の部屋に向かう。傍から見れば恋人同士の同棲なのだろうか。今日のことを楽しそうに話す彼女と、相槌を打つ俺。

 部屋に着くなり彼女は長い髪を纏め、食事の支度を始めた。その間に俺は取り込んだ洗濯物を畳む。これが、今の俺たちの日常。
 ふたりで食卓を囲む日が増えるにつれて、こんな日がずっと続けばいいと願う気持ちも少しずつ強くなっていく。一匹狼の俺が、無条件で傍にいることを受け入れている唯一のひと。俺の孤独を癒してくれる、愛しいひと。
 いつか彼女に好きな人が出来れば、俺との日々は終わるだろう。その前に告げてしまえばいいと思う反面、言ってはならないと止める俺もいる。
 反故にした旅の約束は俺を縛る枷となっていた。
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