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二泉の日
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日本人は凝った包みをよくするらしい。プレゼントを贈る側は別にいいとして、貰った側の男の子がそんな凝った包みを喜ぶとは限らない。それでも包んだ方がいいかどうか迷いに迷ってその辺をうろうろしてしまう。
「……輝ニ?」
見覚えのある黒髪が目を引いた。但し、想像した“彼”よりもその髪は短い。

「…輝一君?」
「泉?」
何かを探している様子のない輝一君は、ただ店内をぶらぶらしているだけみたいだった。
「輝ニは?」
「あそこ」
輝一君が指差した先には、チョコレートの箱を持って迷っている輝ニの姿。

好きな子……いるのかな。


「泉?」
「ごめん、輝一君。私そろそろ帰らなきゃ。1日早いけど、渡しておくね。それじゃ!」
「え、おい、泉!」
持っていた箱の1つを輝一君に押し付けて、走って店を出た。

翌日、仲の良い女の子とチョコを交換しながらも、昨日見た光景が頭から離れなかった。輝ニが真剣に悩んでいなかったら、そこまで気にならなかったのに。

「また明日ねー」
「うん」


落ち込んだ気分のままで帰路につく。と、家の近くを彷徨く人影があった。

「輝ニ?」
「!! 泉…」
「どうしたの?」
この辺に知り合いでもいるのかな?
「…今日、バレンタインだろ?だから、これ………」
「これ…私に……?」
「ああ」
「グラッチェ!」
凄く嬉しいけど、輝ニの顔が見れない。でもチョコレート渡さなきゃ。
「あのね、輝ニ……本命チョコ受け取って下さい!!」
「……………本命?」
きょとんと首を傾げた輝ニの顔が徐々に赤くなった。
「俺で、いいのか?」
「うん」
吐息が白くなる位寒いけれど、そんな白い冬がひそやかに紅く染まるようなバレンタインを迎えた。
〜fin〜
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