そっけないやさしさ
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漸く冬が終わりやっと春って感じだけど、まだちょっと寒い。
ここ数日で大分暖かくなったけど、風は結構冷たい。

それならそれで、いいことがありそうな予感もする。



「あっ、輝ニ〜」

走って駆け寄ると、既に待っていた輝ニは不機嫌そうに顔をしかめた。

「泉……」

お前な、と言いかけた輝ニに腕を絡めて黙殺。
デートでお説教されたくないもん。

そのまま無言で歩く。
歩く時は無言になることが多いけど、輝ニとの無言は何だか心地いい。

「輝一君は元気?」

「ああ」

試しに話題を振っても長続きしない。
それでも嬉しい。
最初は素っ気なくて差し出した手も振り払われたけど、今こうして腕を組んで歩いているから変わったんだって分かる。

「…嬉しそうだな……」
珍しく彼から話題が出た。

「嬉しいんだもん!」

大好きな輝ニと一緒に居られて、偶にはみんなで集まって。



「……寒っ!」

冷たい風が私を現実に引き戻した。

「そんな薄着で来るからだ」

嫌みに聞こえるけど、上着を貸してくれる輝ニはやっぱり優しい。

「人目惹くから、外でそんな格好するな……」

普段は何も言わないのに、今日は羽織らせて抱き締めてくれた。

「うん……」

でも時々薄着しちゃうのは、気にしてほしいから。

「輝ニって独占欲強いよね」

「人の事を言えるのか、確信犯」

「あっ、バレてた?」

「当たり前だ」

薄着をするのは、心配してくれると嬉しいから。
「輝ニって優しいよね」

私がこう言うと照れているのか、絶対に顔を見せてくれない。




でも言葉なしでも伝わるよ、輝ニのそっけないやさしさ。
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