悲しい思い出
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あれ?
加藤さんだ。
ギルモンホームに向かう途中、花を持った加藤さんが気になって後を追った。


公園の噴水の縁に花を置いて手を合わせるその姿は僕の知らない人みたいで、少しでも知りたくて声を掛けた。

「加藤さん」

「あっ、タカト君」

振り返った加藤さんがいつも通りに見えて、少し安心した。

「何してるの?」

「今日はお彼岸でしょ? だから、お墓はないけど……ここがレオモンと初めて会った場所なの」

「そっか……」

「形はないけど、ちゃんとお墓参りがしたかったからここを選んだの」

変よね?
そう言って悲しそうに笑う加藤さんに何を言えばいいか分からなくて、抱き締めることしか出来なかった。

「タカト…君?」

「変じゃないよ。レオモンが死んだことは僕たちだって悲しいし、加藤さんが辛い思いをしてることも知ってるから」

「タカト君…」

「一緒に、乗り越えて行こう。加藤さんの力に、なりたいんだ…」

腕を離して加藤さんの顔を見ると、いつも通りの笑顔が見えた。
僕の一番好きな、優しい笑顔。

「ありがとう。タカト君って、やっぱり優しいね」

「えっ? そ、そうかな?」

「うん、すごく嬉しい…」

「加藤さん…」

「タカト〜、お腹すいた〜」

「ギルモン!ごめん、すっかり忘れてた」

その後加藤さんが何て言ったのかは聞き取れなかったけど、いつもの笑顔でいてくれることが嬉しかった。






「そんなタカト君が大好きよ」

私の声は聞こえなかったみたいだけど、それでも嬉しいことに変わりはなかった。
この気持ちはまた、改めて伝えるから。
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