お前は俺をだませない
1/2ﾍﾟｰｼﾞ目元旦に初詣に行くのはごく当たり前のことだ。現に今、賽銭箱の前には行列が出来ている。だが、俺の隣にいる奴は落ち着かないように目が泳いでいる。繋いでいる手を離せば、フラフラとどこかに行ってしまいそうで。

「泉」

「なっ、なに？」
「１人で悩むな」
「別に悩んでるわけじゃないわよ。ちょっと考え事してただけ」

神社を出てから思い切って訊いてみた。

「俺には言いにくい事か？」
「………着物、着て来れば良かったかなって……」
正月に着物を着るのは珍しくない。神社や途中の道でも着物を着た女の子を何人か見掛けた。
「私、こんな髪だから着物は似合わないでしょ？　輝ニみたいに黒かったらいいのに」
泉の髪は綺麗な金髪だ。それでも問題ないと思う。

「似合う似合わないは関係ないだろ？」
「でも着物だと寒そうじゃない？」
「上着くらい貸してやる」
今更そんな嘘でごまかすな。

「来年は着物着て来いよ」
「ありがと、輝ニ！」
お前は俺をだませない。嘘偽りのないお前が好きだから。[指定ﾍﾟｰｼﾞを開く]

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