好きだから
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偶然の出来事だった。
急いでいる時に限って、忘れ物をした。
そして戻った教室には、ふたり分の影。
その片方が私の好きな人で、もう片方は私と正反対の可愛い女の子。

「………八神君が好きです!!」

やっぱり帰ろうと踵を返した時、聞きたくなかった言葉が聞こえてしまった。
もし、太一が断らなかったら…?
ほんの少し想像しただけで、鋭い痛みが走った。
太一の傍に居られなくなるかも知れないという不安、そして気持ちを伝えることができる彼女への、嫉妬と羨望。
幼なじみの壁を超える勇気なんて、私にはなかった。


「空、おはよう!」

「おはよう、太一」

翌日、太一は何事もなかったかのように話し掛けてきた。
一晩考えた末、私は結論を出した。

「サッカー部の試合って、次はいつなの?」

「えーっと、再来週の日曜だな。空、応援に来てくれるのか?」

「そうね。予定は特にないし、行くわ」

ちゃんと笑えてるかな?
微かな不安は、私の大好きな笑顔に消し飛ばされた。

「試合、楽しみにしてろよ」

「うん!」

あの女の子にはヤキモチを妬いたけど、妬いてるだけじゃダメっていうのが私の出した結論。
素直になれば、少しでも進展するかも知れない。だから、素直になるわ。

だって好きだから
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