真ん中バースデー
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真ん中バースデー

「タケル君、一緒に帰らない?」
「うん、いいよ」
 いつもは僕から誘ったりなんとなく一緒にって空気になったりするから、ヒカリちゃんから誘ってくれることはあんまりない。だから今日は、いつもより少しドキドキする。

「ヒカリちゃん? そっち帰り道と逆……」
「ダメ?」
「え?」
「寄り道しちゃ、ダメ?」
 この状況でノーと言える人がいたらお目にかかりたい。普段寄り道なんてしない子から誘われたし、軽く上目使いだし。
「行こ」
 軽く手を握って歩き出す。沈黙が続く中、ぎこちなく手を握り返してくれたのが分かった。


 ウィンドウショッピングであちこち回ったり、アイスをひと口交換したり。これが今の私にできる精一杯のこと。タケル君が手を握ってくれた時、周りの人みんなに聞こえるんじゃないかって思うくらいドキドキした。
「着いたよ?」
「え……? あっ! ごめん……」
 彼のぬくもりが離れてく。いつもは途中の道でバイバイなのに、マンションの前まで送ってくれたんだ。
「今日はありがとう。楽しかった」
「ううん。私の方こそ、ありがとう」
「どう致しまして。でも、どうして誘ってくれたの?」
「そ、それは……」
 恥ずかしい。悪いことじゃないし、言えないわけでもないけど、ものすごく恥ずかしい。
「僕には言えない?」
「そんなことないっ!」
 思わず叫んでしまって、余計に恥ずかしくなる。恥ずかしいけど知ってほしいから、ちゃんと話すよ。
「今日は、私とタケル君の真ん中バースデーなの……」
「真ん中バースデー?」
「誕生日と誕生日の間の日なんだけど、記念日が増えたみたいで得な気しない?」
 記念日なんて言ったけど、まだ告白もしてない。してないけど、少しでも私を意識してほしい。我が儘だな……。
「……あのさ」
「うん」
「また、ふたりでどっか行かない? 記念日とか関係なく」
「えっ?」
 視線をうろうろと彷徨わせるタケル君の頬が赤い。珍しく照れてるんだ。
「嫌?」
「……ううん」
 きっと今、私の頬もタケル君に負けず劣らず赤いと思う。
「また、行きたい」
 ほんとはもっと、一緒にいたいから。だから、また誘うね。
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