想い、ひとひら
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 もしもあの時ああしていれば……そんな風に後悔することの1回や2回、誰にだってあるものだと思う。だけど、どんなに強く願っても、過去を変えることはできない。起こったことをなかったことにするなんてできないから、僕らは起こったことを受け止めなきゃいけないんだ。

「ごめん……」
 明るくなった劇場で見えた君の目元は、やっぱり赤くなっていた。君にこの映画を見せるのは、残酷だったよね。
「大丈夫、大丈夫だから……」
 目元に残る涙を拭いながら話す君の言葉は嘘じゃない。嘘じゃないのは分かるのに、どうしても心配で――。
「どこかでお茶しない? 感想とか、色々話したいし」
「うん!」
 君が笑ってくれて、やっと僕も笑えた。


「私、リブートは起こってほしくない」
 まっすぐな瞳で僕を見つめながら、驚くほどはっきりと君はそう言った。
「レオモンに逢いたくないわけじゃないの。大切なパートナーだってことは、これからも変わらないわ。でもタカト君とギルモンちゃんやクルモン、インプモン、みんなの出逢いをなかったものにしてまで逢いたいとは思わない。そんな悲しいこと、起ってほしくない」
「樹莉は強いね」
 僕だったら、迷って悩んで、答えを出せないかもしれない。
「そんなことないわ」
 手が包み込まれる。小さくて温かい手は、微かに震えていた。
「私だって、弱いのよ。たくさん間違えて、現実から目を背けて、差し伸べられた手を取れなかったこともあった。クルモンに叱られてやっと分かったの。私の周りには、私のことを大切に思ってくれる人がいることに。みんながいてくれるから、前を向ける。それに、レオモンは私の中で生き続けてるから。私が忘れない限り、ずっと」
「……そっか」
「姫川さんの気持ちも少しは分かるけどね」
「うん、そうだね」
 僕や他のみんなはパートナーを亡くしていない。でもずっと逢えなくて、元気にしているのかさえも分からない。だからパートナーにまた逢いたくて頑張ってた姫川さんの気持ちが分からないわけじゃない。
「でも、僕もリブートは起こってほしくないな」
 全てがリセットされれば、またデ・リーパーが世界を壊そうとするかもしれない。ふたつの世界と大勢の命を危険にさらしてまで、ギルモンに逢いたいとは思わない。もう逢えなくても、僕たちが出逢って、一緒に過ごした時間は宝物だ。かけがえのない、宝物。そして、僕と君が今一緒にいるのも、デジモンたちとの出逢いがあったからだと思う。それを失くしてしまうのは嫌だ。
 窓の外に薄く積もった雪の中に、この想いを閉じ込めて大切に守っていきたい。
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