変わらぬ魅力
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 久しぶりに通りかかったそこには、変わらない景色と甘い香り。中高生の頃、帰りにわざとこの辺りを通っていた。遠回りになればなるだけ、もっと一緒にいられるから。
「懐かしいなぁ。この時期はいつも金木犀の香りがしたよね」
「そうそう。地面に落ちた花を持って帰ったりもしたわ」
 成人してからしばらく経つのに、その瞳の輝きはカードゲームに夢中になっていた頃と変わっていない。夢見る力を持つ、眩しい瞳。
 とりとめのない話をしながらふたりで歩いた帰り道。ぎこちなく手をつないでみたり、時には思い切って顔を近付けたり。私に……私たちにとって金木犀の香りは、そんな甘酸っぱい想い出を蘇らせるもの。

「ねえ、タカト」
「何?」
「どうして今日、ここに来たかわかる?」
「…………」
 人生の半分以上一緒にいるんだもん。この金木犀のように変わらない君が、何を考えているかくらいわかるよ。

「樹莉」

 いつもの穏やかなそれとは違う、鋭さと強さを宿した瞳が射貫くように私を捕らえる。
「僕、ギルモンたちをただ待っているなんてしたくない。何ができるかわからないけど、僕にできることをしたいんだ」

「……うん、知ってた」
「え……?」
「私、待ってるから。行ってきて」
「いいの? こんな――」
「その代わり、絶対帰ってきてね。ずっと待ってるから」
 大切な人を失う恐怖は今もある。それでも彼を信じたい、前に進みたい気持ちもあって。
「ありがとう、樹莉」
 大好きな君との想い出の場所で、前に進む約束をしたいと思っていた。君の願いは、私の願いでもあったから。
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