あなたのおかげで私はとても幸せ
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 どれだけ気を付けていても、回避できないことはある。今の自分のように。

「タケル君……ごめんね」
「気にしなくていいよ。それより、足痛くない?」
「……少しましになったかな」
 せっかくの夏祭りだからと着た浴衣に合わせて、サンダルではなく下駄を履いた。彼は可愛い、似合ってるよと褒めてくれて、歩きにくくないようにといつも以上にゆっくり歩いてくれた。はぐれないように、手を繋いで。
 ふたりで夏祭りに行く回数はそろそろ片手の指を越えるが、屋台や景品は毎年違う顔ぶれであまり飽きない。
 りんご飴を食べて、輪投げや射的に挑んで、お祭りの雰囲気を楽しんで。さて帰ろうかという時にそれは起こったのだった。

 人混みから抜け出そうとした際に人とぶつかり、つまづいた拍子に下駄の鼻緒が折れた。タケルが受け止めてくれたおかげで転倒は免れたものの、足の指の間が切れたらしく痛みが走った。捻ってはいないのが不幸中の幸いか。
 喧騒から外れた場所で確認すると軽く出血しており、絆創膏で応急処置をする。傷口が開かないようにと、帰りは彼がおぶってくれることになった。
「あの、重くない?」
「むしろヒカリちゃんはもう少しふっくらしてもいいくらい。健康診断の結果に痩せすぎって書かれない?」
「私これでも標準よ」
「それならいいけど」
 話していると紛れるのは痛みだけではなかった。会話が途切れた途端に、彼の背中の広さや温かさに気付いて鼓動が高鳴る。背負われているのが嬉しいやら恥ずかしいやら、きっと今ヒカリの顔は夜目にも明らかなほど赤いのだろう。見えないとわかっていても、隠すように広い背中に額を付ける。
「タケル君」
「何?」
「来年も、お祭り行こうね」
「もちろん」
 来年もまた浴衣を着よう。今日のことを忘れない為に。
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